夏の風物詩 花火





この花火の火が消えたとき。
彼女にキスをしようと思った。


嫌われたっていい。
この思いが伝わらないならその時はそれまで。
彼女を魅了できるいかどうか、
男としてみられているかどうか。

心の戦いが始まった。



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某日


トドロキはストリートにてナンパしていた。
とにかく暑い福岡。夏が過ぎ風あざみ。
少しづつ風が心地くなってきていた。
真夏のストリートは時間が経てば経つほど、自分を不利にする。

目標を達成するために、プランを立てる。
今の自分と目標の距離は?
今日は何と学ぼうか。何にトライしようか。
ゲームとは試合のこと。実践のこと。

その日の目標は、また会ってみたい思う女性と連絡先を交換すること。

トドロキはセックスが好きだ。
心から解け合うこと。その人を受け入れ深く繋がること。
トドロキの実力ではまだ即日では魅了しきれない。
というより、気持ちが向かない。
時間を少しかけ、そう次の日のカレーのように時間をかけて楽しみたい。
界隈では準即と呼ばれる行為が好きだった。

トドロキは全ての女性が好きだ。
トドロキは人が好きだ。
自分にないものを持っている人には憧れる。
話を聞いてみたい。
疑似体験でいい。少しでもその世界を教えてほしい。いつもそう思っている。

そんな時だった。

凛とした雰囲気に、意思の強そうな目。
前をしっかり向いて歩くひと。直感で話してみたいと思った。

直ぐに、足が動く。
声をかけ、和みを開始する。

連絡先を交換した。

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そこから、
ちょこちょこ連絡を取り合っていた。

仕事に真剣に向き合う彼女。
やり取りでもいろんなことを教えてもらえた。


仕事以外にも地元のこと。様々
LINEでは、昔から知っている友達のように話す。
その日のこと。知っててほしい事。
やり取りをしているとアポが決まった。

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某日


アポの日。
仕事を終えるのがぎりぎりになり、急いで彼女のもとへ向かう。
既に到着して待ってくれている彼女。

直感で分かった。
素敵な時間が始まる。


「久しぶり。今日はありがとう」
いつも、時間を作ってくれてありがとうという気持ちを忘れない。
必ず最初に伝えるようにしている。
営業をしていた時、最初が肝心だとよく上司からアドバイスを頂いていた。
その通りだと思う。

少し遅れた自分を咎めることなく、彼女はいたずらに笑った。
「行こう、楽しいデートにしよう。」

トドロキは少しロマンチ ストで、ナルシスト。
そして、いつも自分が中心でわがまま。
その世界に引き込んでいまえば、勝ち負けという項目だけ見るなら勝つことが多い。

今日も、エピソードトークや適当な返答。
柔らかい雰囲気を意識しながら、素でいれるようにしていく。

「トドロキは、過去の恋愛に拘らないタイプだよね?」

「そうそう。全くこだわらない。ファーストキッスのみかちゃん元気かな?玉の輿のれたかな?」

「いやいや、めっちゃ覚えてるやん笑」

「まぁ、都合の悪い事だけすぐに忘れんだけどね。でも、結愛とはそうなりたくないかな」

「・・・・なんてね」

少し言葉を投げかけ、相手の反応だけ見る。
いつも、核 心に迫るようなことをポイントポイントで投げ、
少し引く。
いつものパターン。

彼女の表情を見逃さない。
すこし、頬をあげた。
「もー、ほんと何考えてるかわからないよ。」

「いつもドキドキ出来ることと、目の前の人のことだけ考えてるよ。今なら結愛だね」

かっこつけても、照れはしない。
微動だにしないというか堂々としていることが心を整えるために大事だと知った。
何を言っても、何を聞いても心の泉に波をたたせない。
これがいつもパフォーマンスをするための力だ。


「今日はこうしたいと思ってる。いまから2案言うから選んでほしい。」

一件目のBarを出て、少し行ったところにコンビニがある 。

女の子に遊んでもらうようになって、
キスをしよう、手をつなごうなんて言わないほうが成功率が高いことを知った。

何も言わずに彼女の手を取る。
少し、彼女の世界、トドロキの世界が近くなったように感じた。
握り返すその手から彼女の気持ちが伝わってきそうで手にも神経を集中させた。


夏といえば花火。
トドロキも花火が好き、大きな打ち上げでなくていい。
小さくても、その場がぱっと明るくなる暖かい光。
そこに包まれる空間。
数秒間のドラマチック。
そんな時間が好きだった。

コンビニで買った、少しのお酒と花火。
地下の公園のベンチに腰を下ろし準備を進める。

僕ら何度も繰り返し乾杯をしたんだ。
お酒と笑顔と少しの街灯。
二人の空間は作られていく。

「花火好きなんだ。今年は仕事が忙しすぎて夏っぽい事なんもできてなかったからありがと。」
「みてよ、インスタの写真、友達からのLINE」
すこし照れっぽく、どこか寂しそうな彼女の顔
「まぁ、任せとけよ。今宵は素敵な夜になるよ」

着々と花火の準備を進める。

最初の花火に火をつけ、

シュシュシュ・・

ッジュ!

火薬のにおいとあたたかな光が二人を包む。
その光がやさしく彼女を照らし、
その姿はきれいだった。


この花火の火が消えたとき。
彼 女にキスをしようと思った。
嫌われたっていい。
この思いが伝わらないならその時はそれまで。
彼女を魅了できるいかどうか、
男としてみられているかどうか。

心の戦いが始まった。


「終わっちゃったね。」

少し寂しそうな彼女。

何も言わず、頭をなでる。
ふと彼女の視線に気づく。目を合わせる。

近づく顔と顔

手で阻まれる。

以前なら、もうトライしないだろう。
トライしなければなにも生まれない。

彼女の行動だけ見逃さない。


言葉は添えない。目で伝えるだけ。

重なる唇
あふれる気持ち。
何度も重ねる唇、貪りあうよ うに。

トドロキはキスが好き。
キスまで行けばその後のグダはない。
いきなり乱暴なキスをするのではなく、触れるか触れないかくらいのキッスから
感触を確かめ合うかのようなキス。

相手の心を昂らせる。
醒めさせるのではなく、快楽の扉を開かせる。

いちばんやってはいけないのががっつくこと。
余裕がないようにみえてしまうこと。

気持ちだけ昂らせて、
「結愛からキスして」

これであっちからキスして来ればここでのドキドキは終わり。
そのまま、都会の明かりに囲まれ、
二人の世界になれるところで求め合った。



夏の風物詩青姦


高いところから明るい街を見下ろし
トドロキJrを咥える結愛。


このシュチュエーションだけで、
満足してしまいそう。



でも、ダメだ。
ゆっくり対話したい。


そのままホテルに行き、激しく求めあった。



もしあの時声をかけなかったら、
結愛と一生関わることなく死に行く人生だったかもしれない。


もし、キスが拒まれて萎縮していたら、
あの絶景は見られなかったかもしれない。



今日この時の奇跡に、感謝。






夢があるっていいね。



これだからナンパはやめられない。










結愛、また会おう。